ポン太郎一家の朝
スズメたちがちゅんちゅんとさえずる。
柔らかな太陽の光が、この街に差し込んでいる。
透き通った青い空。気持ちのいい朝だ。
「ポーン、ポポーン!!(起きろー!朝じゃー!!)」
茶川家のペット・ポン太郎は、6時30分00秒きっかりに鳴いた。
ポン太郎は、この家の目覚まし時計でもあるが、列記とした動物なのだ。
ただし、犬でも猫でもネズミでもない。不思議な生き物なのだ。
・・・実は、茶川家の家主、故・ふくじいの生まれ変わりなのである。
そんな事実は、誰も知らないが。
「おはよう、ポン太郎。今日もありがとう。」
よしおがさっぱりした顔で起きてきた。
故・ふくじいに代わってこの家の家主になったよしおは、しっかりしていてまめな男だった。
「おはよう、よしおくん。」
「おはようございます、みほおばさん。」
次によしおの叔母で、ふくじいの義妹のみほばあが起きてきた。
みほばあは大会社の女社長で、日本でも有数の億万長者だ。
何故みほばあが大豪邸ではなく、一般的なこの家庭に住んでいるかというと、
みほばあは日本の伝統が好きだからだ。
普通にしていれば、この家でよしおの次にまともな人間である。
・・・普通にしていれば、の話だが。
「はぁ〜、今日こそ私の白馬に乗った素敵な王子様が現れないかしら。」
「あ、そ、そうですね・・・・。」
みほばあのスイッチがONになってしまった。目が限りなく澄んで、キラキラしている。
みほばあのバックには、鮮やかな花が散っているように見えた。
これがみほばあの裏の顔、自称夢見る乙女である。ちなみに現在62歳。
「おはようポン太郎―!!おばあちゃん!!おじさーん!!」
近所に大迷惑な大声で少女が出てきた。
この弾丸娘は、みほばあの孫娘・まき(通称まき姫)という。
この馬鹿にでかい声で、この家のほとんどが起きた・・・ と思ったら大間違いである。
「おっはよー!!まき姫―!!!お父さーん!!!みほばあ!!!ポン太!!!ろう。」
次にこれまたハイテンションで一番背の高い少女が現れた。
よしおの娘、たにこだ。たにこはバスケが得意である。
「うるせーんだよ、朝っぱらから!!近所迷惑なんだよ!」
という声と同時に、寝ぼけ眼で入ってきた少年・さとしは、20cmも上にある自分の妹の顔を睨み付けた。
さとしはサッカー部のエースで、ご●せんが好きな高校生である。
「ちびのくせにお兄ちゃんがいじめた!!」
「ちびは関係ねーだろ!てめーが悪い!」
「あんですってぇ!?低血圧なお兄ちゃんが悪いのよ!」
「俺はいいけど近所の迷惑を考えろ!」
・・・そのけんかも、立派な近所迷惑である。
ギャアギャアと兄弟げんかをしているが、みほばあはまだmy worldに入り込んでいて、
まき姫は「いいわよ、二人とも!いけ、そこだ!負けるな!」みたいに歓声を上げている。
唯一、日常茶飯事と思いつつも止めているよしおは、神様に恨まれるようなことでもしたのだろうか・・・と思っていた。
そこに、紫の綺麗な肩掛けをした老女が現れた。
ふくじいの愛しの妻で、みほばあの双子の姉・みさばあだ。
みさばあは、
「今日もいい天気だねぇ。」
と暢気なことを言った。
「あ、みさばあ聞いてよね!!!お兄ちゃんが・・・!」
「あ、みさばあ聞いてくれ!!!こいつがな・・・!」
「はいはい、おはよう。今日も清々しいねぇ。」
みさばあはニコニコしながら言った。みさばあは、ほんわかしていて、何に対しても楽観的だ。
昔、ミス・日本に輝いたという噂もある。
「みさばあみさばあ!!お兄ちゃんがひどいんだよ!」
「今日はポン太郎のお散歩に長く行ってあげよう(ニコニコ)」
「みさばあみさばあ!!こいつが俺のことちびって言うんだぜ!!」
「そうだねぇ、今日のおやつはクッキーにでもしようかねぇ(ニコニコ)」
・・・全然会話が成り立っていない。
「さーて、今日の朝ごはんは鮭にでもしましょうか。」
相変わらずみさばあはおっとりした口調で言った。そして、キッチンへ向かう。
「あ、あのババアがまだ起きてないわ!!まき姫、行くわよ!」
たにこがぴょんぴょんしながら言った。
「いくぞーvv」
まき姫は相変わらずテンションが高い。
2人はだっと駆け出していった。
「こらー!!起きんかいこのくそぼきゃー!!」
「ふげ!」
たにこは別の部屋へ行き何か丸いものを蹴っ飛ばした。
その丸いものは、ぶ厚い布団に包まっている。
「早く行かないと遅刻になるわよ!!」
まき姫は布団をガバッと剥がす。
「むにゃむにゃ・・・ああ、だめぇ・・・待って、・・・いかないで、私のステーキ・・・。
あぁ・・・ダメ、食べちゃ・・・いやー、食べないでぇ、・・・ステーキぃ・・・・。」
布団に包まっていた人物は、そんな寝言を呟いていた。
「いつまで寝とんじゃい!!ポン太郎が鳴ってから30分過ぎたんじゃー!!」
ドゲシッ。
「いったー!!ひ、ひどい!!ひどいわ、たにこ!」
その人物・・・たにこの実母、よしこは、べそを掻きながら目を開けた。
「たにこ、鳴ってじゃなくて鳴いてだよ。」
「あっ、そっか〜まき姫vvで、嘘くさい演技なんかすんじゃねーよ!!」
・・・まき姫と実母の違いが顕著に現れている。
するとさとしが、
「お袋、昨日買ったお茶パック、どこやしたんだ?」
と部屋に入ってきた。
よしこは、さとしにすがりながら
「うわーん、さとしぃー!!聞いてよぉぉぉ!!」
と泣き叫んだ。
「ど、どうしたんだ!?」
「たにこが・・・たにこがね、私をいじめるのぉぉ〜!!」
「そ、それは酷い!酷すぎるぜ!」
「さとしから、何か言ってよぉ!!」
「こらたにこ!お袋を泣かすんじゃない!」
「見え透いた演技をするのはやめろ。」
たにこがバシッとよしこを叩いた。
一応言っておくが、決してさとしはマザコンじゃない。
よしことさとしはただ演技が好きなだけなのだ。
この光景を見て、よしおははぁとため息をついた。
・・・どうして茶川家にはまともな人間がいないのだろう。
その疑問は、一生消えそうにない。
☆おまけ★
「ポン太郎、今日は緑野公園にでも行きましょうか?」
みさばあは、ニコニコして言った。
「ポン!ポン!(わしとおばあさんの思い出の場所じゃないか!!おばあさんは、わしが守る!)」
「はいはい、おなかがすいたのね。早く行きましょうね。」
「ポッポンポーン!(おばあさーん!!)」
End
あとがき
ポン太郎一家最初の作品です。
はわわわわ・・・この下ない駄文に目を疑います・・・(汗
コメディなんで笑って許してください・・・。
それでは。深空でした。