抜けるような限りなく青い空。
ひんやりと冷たい柔らかな風。
穏やかな秋は、町を鮮やかに染めてゆく。
ぃ
在てくれた君にアリガトウ 前編
「たにこ。リモコン。」
新聞を片手に、ソファーにえらそうに座っているさとしが言った。
…どうやらTVを見たいらしい。
呼ばれたたにこは上の空。
床にひかれたカーペットの上で、ぼんやりしながら寝そべっている。
「たにこ。リモコン。」
「…。」
「たにこ。リモートコントロール。」
「…。」
なんで略しないんだ。
「デカバカブスのハイテンション。リモートコントロール。」
「…。」
酷いけど、事実だから黙っておく(なにぃ!!?? byたにこ)
「太陽系地球北半球ユーラシア大陸東アジア日本国東日本関東地方東京都南朝葉流星3×-6○8△茶川家長女流星中学1年5組19番茶川たにこ。
テレビ変えるやつ。」
「…。」
前の説明が長すぎて、リモコンのことが適当になっている。
さとしは黙って立ち上がり、ズカズカとたにこの隣においてあるリモコンを掴み、またソファーに戻っていった。
そしておもいっきり、リモコンを大きく振り上げて、
たにこに向かって投げた。
ドコォ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
「いってええええええええええええええ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
「おらたにこ、リモコン取りやがれ。」
「ちょちょちょ、さっきあんたリモコン取ったじゃん!!!!投げる必要なかったじゃん!!!!
そのまま使えば良かったじゃん!!!!そんなにあたしに取って欲しかったのか!!!!」
「たにこのくせに俺の命令をきかねーのが悪いな。」
「たにこのくせってなんだ!!!!」
「リモコン。」
「無視するな!」
「リモコン。」
「リモコンじゃわかんねーよ。」
「リモコン。とれ。」
「単語だけで言うな!!」
「てめぇんなこともわかんねーのか。バカだな。」
「るせぇ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
たにこはリモコンをむんずと掴み、さとしに向かって思いっきり投げた。
さとしはクッションでその衝撃を和らげ、悠々とテレビをつけ始めた。
「…くそっ。」
たにこはえらそーな兄に対する怒りを隣で寝ていた(いたのか)ポン太郎にぶつけた。
「ポォォォォォン!!!!(いたァァァァァ!!!!)」
「うるせぇポン太郎!!!テレビ聞こえねーだろ!!!!!!!!」
リモコンを投げるさとし。
倒れるポン太郎。
「リモコン。」
えらそーに右手を差し出すさとし。
「何ぼけーっとしてんだよ、でけーの。」
「実はあたし…って、あたしはたにこじゃあ!!でけーのってなんだチビ!!!!」
「此間4ミリ伸びたんだよバーカ」
「変わんねぇ!!!!なんでそんなしょーもねーことにあたしがバカにされなきゃいけねえんだ!!!!」
「で、何でぼけーっとしてたんだよ」
「兄貴には教えない。」
「言え。俺の下部として当然の義務だ。」
「いつから貴様の下部になった。」
「生まれたときから。」
「きさま…「たにこぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
ハイテンションなまき姫がリビングに入ってきた。
「まき姫ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
「うるせえたにこ!!!」
「なんでまき姫には何も言わないの!!!!!」
「丁度CMだったから。」
…言い返す言葉もないたにこ。
「どうしたの、まき姫。」
「智のバースディが明日だから買い物行こうvv」
「あ、明日黒川の誕生日か!!!!!」
智…黒川智春とは、たにこがめろりんらぶ(寒)なさわやか天然イケメン少年のことである。
「さとしも行こう!!!」
「うん、楽しそうだし。」
「…What do you mean?」
「いろいろ。カラーカラー。」
「…その英語、違うくね?」
「オレ語だ。」
「何勝手に作ってんの。」
…どうもこの兄妹は勝手に言葉を作りたいらしい。
「っていうか、皆で行くの?」
「当たり前じゃん。そうじゃないとこのストーリーが盛り上がらないし。」
「なにそれ!!!!結局あたしの初恋って、ポン太郎一家の引き立てに使われてるってわけじゃん!!!!!!」
…その通りだ。君はそのために生まれてきたといっても過言ではない。
「嫌じゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
ごめん、ここで一旦切れる。
ネクスト。